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帰無仮説が棄却できても、対立仮説を採択できるとは限らない

以下は、筆者の私見です。 誤解があれば、ご教示いただけると幸いです。


世の中の統計学の解説では、「帰無仮説を棄却することによって、対立仮説を採択します。これによって、対立仮説が成り立っていることを立証します。」という説明をします。

帰無仮説は採択できる のページでは、「検定は、対立仮説が採択できるかどうかを検証する方法。対立仮説が採択できないからと言って、帰無仮説の採択にはならない」という説明が、世の中ではけっこうあることを書いています。

「帰無仮説は採択できない」という解説では、帰無仮説は採択できるものではない理由の説明も見られます。 そういった解説では、対立仮説を採択することに対しては、何の疑いもなく、「帰無仮説が棄却できるのなら、対立仮説は採択して良いのだ」というようになっています。

しかし、よくよく見てみると、「帰無仮説は採択できるものではない」という理由が、対立仮説についても当てはまっていることがあります。

帰無仮説と対立仮説で、分布が異なる場合

「帰無仮説を棄却することで、対立仮説を採択できる」ということが成り立つのは、フィッシャー流の場合だけです。 例えば、帰無仮説が「猫」、対立仮説が「猫ではない」の場合、データを調べて、「猫であることは、とても考えにくい」となれば、「猫ではない」という対立仮説を採択できます。

2種類の対立仮説 のページでも説明していますが、ネイマン・ピアソン流の場合、「帰無仮説も対立仮説も棄却」ということが起こる可能性があります。

例えば、帰無仮説が「猫」、対立仮説が「犬」だったとします。 データを調べて「猫ではない」だった時に、「犬です」というためには、「猫か犬か」しかあり得ない状況にしておく必要があります。 その状況が作れていなければ、「猫でもなく、犬でもない」という結論があり得ます。

「帰無仮説は採択できる」の補足

「猫か犬か」しかあり得ない状況なら、犬でなければ猫です。 「帰無仮説は採択できる」というのは、こういうことです。



帰無仮説は採択できる



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