トップページ | ひとつ上のページ | 目次ページ | このサイトについて | ENGLISH

環境管理会計

ライフサイクルコスティングやマテリアルフローコスト会計をすると、コストダウンだけでなく、 環境保全につなげられることもあります。 そのため、これらは「環境管理会計」と呼ばれます。 企業の内部的な改善に使う会計なので、 管理会計 の一種です。

ただし、お金の計算だけでは、 環境への影響はわからないため、 環境影響評価 とは別物です。 コストダウンが進んでも、 環境への影響がどの程度変わっているかどうかは、これらの手法だけではわかりません。 環境影響評価としても使いたい場合は、CO2の排出量や、有害性の減少量等も一緒に評価すると良いです。

ライフサイクルコスティング

ライフサイクルコスティングは、英語でLife Cycle Costing(LCC)です。 LCA と似ています。 こちらは、ライフサイクルのコスト計算をするもので、 製品販売後の 社会的費用 も含めます。

ライフサイクルコスティングは、設備の寿命全体でのコスト計算のことも指すことがあります。 ライフサイクルコスティングの国際規格に、IEC60300とISO15663があるようですが、 どちらの規格かは不明です。

マテリアルフローコスト会計

マテリアルフローコスト会計は、英語でMaterial Flow Cost Accounting(MFCA)です。

例えば、1枚の板があって、半分の面積をくり抜いて、製品を作ったとします。 マテリアルフローコスト会計では、製品を「正の製品」と呼び、くり抜かれた端材を「負の製品」と呼びます。 くり抜く作業と、材料代で10000円かかって、端材の処理代に200円かかっているとしたら、 マテリアルフローコスト会計では、
「正の製品を作るのに5000円かかって、負の製品を作るのに5200円 (5000円 + 200円)かかった。」
、と考えます。

従来の原価計算は、
「正の製品を作るのに、10200円かかった。」
、と考えて、負の製品のことは考えませんので、マテリアルフローコスト会計とは大きく違います。

マテリアルフローコスト会計をすると、 「負の製品(売れない物)を5200円もかけて作っているのか!?」、ということに気付き、 ムダが見えるようになります。 マテリアルフローコスト会計で計算しなくても、端材を少なくしたり、 処理代を減らすように改善を進めることに気付けない訳ではありませんが、 ムダが「お金」という尺度で表現できるので、印象が全然違って来ます。

実際のマテリアルフローコスト会計では、加工に使ったエネルギーや人件費等も、材料費と同じように、正と負に分割します。



参考文献

品質コスト、ライフサイクルコスティング、マテリアルフローコスト会計の話は、 管理会計 の参考文献にも載っています。


マテリアルフローコスト会計

マテリアルフローコスト会計 環境管理会計の革新的手法」 中嶌道靖・國部克彦 著 日本経済新聞出版社 2008
マテリアルフローコスト会計の背景から事例まで、マテリアルフローコスト会計のほぼすべてをまとめた本です。


ムダを利益に料理する マテリアルフローコスト経営」 古川芳邦・立川博巳・古川英潤 著 日本経済新聞出版社 2014
日東電工社で実際にマテリアルフローコスト会計を使ってきた方が、その実例もあげつつ、 料理の例でわかりやすく説明しています。
MFCAは、「ムダ発見器」、一歩進んで「お宝発見器」としています。


その他

ケーススタディ戦略管理会計 :MBAアカウンティング」 辻正雄 編著 中央経済社 2010
・環境管理会計には、MFCAやLCCの他に、環境予算マトリックスというのも入っています。




順路 次は Q&A集

データサイエンス教室