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コスト分析

「コスト」は、誰でもわかっているようで、実はなかなか奥の深いものです。 考え方や計算の仕方を工夫すると、今まで見えにくかったものが、 お金という尺度で見やすくなったりします。 見やすくなれば、改善が進みます。

品質コスト

品質コストとは、品質管理に関連したコストのことです。 品質問題を予防するための「予防コスト」、品質問題が発生した時に対応するための「失敗コスト」、 品質管理の知識を啓蒙するための「教育コスト」等があります。

環境コスト・CSRコスト

品質コストの考え方は、ある特定の目的に使ったお金を集計するという点で、 環境会計やCSR会計 に通じるものがあります。

標準時間

ひとつのものを作る時には、日によって、人によって、差があるものです。 計画的に生産したり、毎日の出来高の良し悪しを判断できません。 このため、特に問題なく作れた場合の作業時間を、「標準時間」として定めます。 「標準時間」は、 生産工学(IE) で決めます。

標準時間が決まると、その差を使ってコストが計算できます。

ライフサイクルコスティング

ライフサイクルコスティングは、英語でLife Cycle Costing(LCC)です。 LCA と似ています。 こちらは、ライフサイクルのコスト計算をするもので、 製品販売後の 社会的費用 も含めます。

ライフサイクルコスティングは、設備の寿命全体でのコスト計算のことも指すことがあります。 ライフサイクルコスティングの国際規格に、IEC60300とISO15663があるようですが、 どちらの規格かは不明です。

マテリアルフローコスト会計

マテリアルフローコスト会計は、英語でMaterial Flow Cost Accounting(MFCA)です。

例えば、1枚の板があって、半分の面積をくり抜いて、製品を作ったとします。 マテリアルフローコスト会計では、製品を「正の製品」と呼び、くり抜かれた端材を「負の製品」と呼びます。 くり抜く作業と、材料代で10000円かかって、端材の処理代に200円かかっているとしたら、 マテリアルフローコスト会計では、
「正の製品を作るのに5000円かかって、負の製品を作るのに5200円 (5000円 + 200円)かかった。」
、と考えます。

従来の原価計算は、
「正の製品を作るのに、10200円かかった。」
、と考えて、負の製品のことは考えませんので、マテリアルフローコスト会計とは大きく違います。

マテリアルフローコスト会計をすると、 「負の製品(売れない物)を5200円もかけて作っているのか!?」、ということに気付き、 ムダが見えるようになります。 マテリアルフローコスト会計で計算しなくても、端材を少なくしたり、 処理代を減らすように改善を進めることに気付けない訳ではありませんが、 ムダが「お金」という尺度で表現できるので、印象が全然違って来ます。

実際のマテリアルフローコスト会計では、加工に使ったエネルギーや人件費等も、材料費と同じように、正と負に分割します。

環境管理会計

ライフサイクルコスティングやマテリアルフローコスト会計をすると、コストダウンだけでなく、 環境保全につなげられることもあります。 そのため、これらは「環境管理会計」と呼ばれます。 企業の内部的な改善に使う会計なので、 管理会計 の一種です。

ただし、お金の計算だけでは、 環境への影響はわからないため、 環境影響評価 とは別物です。 コストダウンが進んでも、 環境への影響がどの程度変わっているかどうかは、これらの手法だけではわかりません。 環境影響評価としても使いたい場合は、CO2の排出量や、有害性の減少量等も一緒に評価すると良いです。



参考文献

品質コスト、ライフサイクルコスティング、マテリアルフローコスト会計の話は、 管理会計 の参考文献にも載っています。


コストダウンが会社をダメにする スループット向上で全体最適」 本間峰一 著 日刊工業新聞社 2008
コストダウンのすべてではなく、原価の計算の仕方や、やり過ぎた場合のデメリットを考えないコストダウンが会社をダメにするものとしています。
会社を良い方向に進めるためのシンプルで効果的な方法として、 制約条件の理論 の中にあるスループットの考え方を紹介しています。


コストは、必ず半減できる。」 三木博幸 著 日本経済新聞出版社 2014
この本では、機械の設計を見直すことによる改善を紹介しています。 「強度、製造のしやすさ、メンテナンス性、という点で、もっと良い構造はないのか?」、「設計と製造のギャップは何か?」といった観点でものづくりを見ています。


品質コスト

品質コストの管理会計」 梶原武久 著 中央経済社 2008
「なぜ、品質コストを日本企業が利用するのか?」という問いかけから、 日本の品質管理の現状を明らかにしようとしている本です。 実際の電器機器メーカーの工場での分析が、論拠になっています。
現代では、失敗コストが膨大な金額になることがあるので、失敗コストの最小化を第一に考えるとのことです。 また、予防コストと失敗コストの両方が低下していく場合がある一方で、 技術的に高度な場合等では、予防コストと失敗コストがトレードオフの場合もあるそうです。 いずれにしても、品質コスト(予防コスト、失敗コスト)を把握しておくと良いようです。


マテリアルフローコスト会計

マテリアルフローコスト会計 環境管理会計の革新的手法」 中嶌道靖・國部克彦 著 日本経済新聞出版社 2008
マテリアルフローコスト会計の背景から事例まで、マテリアルフローコスト会計のほぼすべてをまとめた本です。


ムダを利益に料理する マテリアルフローコスト経営」 古川芳邦・立川博巳・古川英潤 著 日本経済新聞出版社 2014
日東電工社で実際にマテリアルフローコスト会計を使ってきた方が、その実例もあげつつ、 料理の例でわかりやすく説明しています。
MFCAは、「ムダ発見器」、一歩進んで「お宝発見器」としています。




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