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トヨタ生産方式(TPS)

トヨタ生産方式は、TPS(Toyota Production System)とも呼ばれます。

流れを作る

かんばん 」等の手法が有名ですが、それらも含め、「ほぼ全ての手法やノウハウは、速く、正確で、安く、負担の少ない流れの実現のためにある」、 と言っても過言ではないかもしれません。

5S

5Sとは、整理、整頓、清掃、清潔、しつけ、の5つのSのことです。 実行する順も、この順です。

5Sの目指すところは、正常と異常の違いが見やすく、わかりやすく、作業しやすい職場の実現です。 これが流れ作りのスタートになります。

平準化

平準化は、生産の時間的、空間的な量の偏りをなくす事です。

ムダどり

スムーズな流れになっていない事を、取り除いたり、最小化します。

加工、在庫、作りすぎ、手待ち、動作、運搬、不良の、7つのムダが着眼点とされています。

「その作業は、価値を生んでいるか?」、「体の負担を軽減できないか?」、等も、着眼点です。

標準作業

作業のムダやブレをなくし、作業がスムーズに流れるようにします。

かんばん

かんばんは、効率的な 在庫管理 の仕組みとして有名ですが、情報が細かく流れるようにする仕組みにもなります。

平均値と標準偏差

流れ作りは、平均値を小さくするものと、ばらつき(標準偏差)を小さくするものの両方があります。

一方、時間、在庫、作業等、TPSが改善しようとするものは、 望小特性 です。 ばらつきを小さくする時は、値の大きいケースが小さくなるようにします。

そのため、ばらつきを小さくする対策は、平均値を小さくする対策にもなり、望ましい方向に進みます。

TPSの中で 平均値と標準偏差 が混同されがちなのは、混同したままでも、ある程度改善が進み、実害がないからと思います。 とはいえ、きちんと区別した方が、対策の着眼点が増えます。

自律的に動く仕組み

個々がそれぞれのルールで動く事が、その足し算からは想像もつかないものを生む事は、 自己組織化 と呼ばれますが、TPSの組織はそのようなものになります。

あんどんや、自働化によって、異常時に現場判断で止まる仕組みや、かんばんをトリガーとして動く仕組みが、自律的な動きを促します。

現場のモチベーション向上、問題の俊敏な解決、等、このような組織の利点は様々なものがあります。

トヨタ社のすごさ

筆者の知る限りでは、TPSの紹介のされ方は、 「TPSという素晴らしいものによって、トヨタ社は世界を代表する会社になった。御社も、その方法を真似ましょう。」、というものです。 トヨタ社が編み出した方法論は、確かにすごいです。

しかし、もっとすごいのは、 自社のビジネスモデルや、ビジネス環境に対してベストと思われる方法論を自社開発して、実践し、 大きな成果につなげている事ではないかと思います。

TPSでは、「必要なものは外注よりも内製」(社内で作る)を重視しますが、 内製するものは、部品や設備だけでなく、改善の方法論も入っている点がポイントと思います。




参考文献

「7つのムダ」排除 次なる一手 IoTを上手に使ってカイゼン指南」 山田浩貢 著 日刊工業新聞社 2017
7つのムダのそれぞれに対して、従来からの考え方に加えて、 センサーによる設備の変化の監視や、画像による検査の自動化など、最新の機器の使い方が解説されています。 「デジタルからくり」と呼ばれています。
全体的には、物と情報の流れの把握を重視されているようでした。


実践トヨタ生産方式 人と組織を活かすコスト革命」 岩城宏一 著 日本経済新聞社 2005
人々が生き生きと働けるための組織作りを重要視されている。
サイクルタイムは作業者の周期。 ベルトコンベアに人が合わせると疲れる。
「現地現物」で事実を把握する事ではなく、資料や机上の議論を優先する風潮がある。
TPS導入のステップは、
大まかな流れ → 強い流れ → 正確な流れ → 管理された流れ
の順に作る。
みずすまし:工場内の細かな運搬役。工程をつなぐ。流れを作る。
標準作業作り:リズミカルな作業にする
日常的な生産管理は現場の仕事になる。 間接部門は異常管理を中心にする。この仕組みは、品質管理にも有効。
経営は、性善説を前提にする。


御社のトヨタ生産方式は、なぜ、うまくいかないのか?」 若井吉樹 著 技術評論社 2007
かんばんはジャストインタイムの手段のひとつだが、「かんばん=TPS」と思っている人が多い。 かんばんは情報の伝達手段にもなる。 かんばんは適切に使わないと、在庫、人、輸送費を増やす問題を起こす。
営業は在庫を増やそうとしがち。 工程と営業のコミュニケーションが必要。 ある部門がTPSを導入しようとすると、別の部門には不都合になることがある。 トップによる調整が必要。
原価はたくさん作れば下がる。原価低減だけに目が行って、売れないものをたくさん作ると、様々な問題を生む。 トップが動かないと、見せ掛けの改善活動になる。
TPSの導入は流れ作り。


入門トヨタ生産方式 トヨタの元工場責任者が教える」 石井正光 著 中経出版 2005
前半がTPSのエッセンス。 後半が、中小企業や海外工場へのTPSの導入経験の話。
TPSが目指すのは、「徹底的」、「ムダ排除」、「原価低減」。 しかし、かんばんなどの道具の導入をTPSと誤解して、導入を難しくしているケースが多い。
工程の流れ化 = 細くて速い流れ作り = 1個単位の流れ作り = 物の停滞をなくす
平準化はできるところから。
2S:TPSの下地作り
中小企業では、人より設備の改善が効果的。
べき動率の向上を目指す。


ムダどり」 山田日登志 著 幻冬舎 2002
「顧客に一番近いところから見る」などの短いメッセージが、目次に並んでいて、目次だけで概要がわかるのが、著者のすごさ、と思います。
その他に、印象に残ったことは、
「ムダとは駄賃がもらえないこと」、 「ビジネスマンとは時間の観念を忘れた人間である」です。
著者は、トヨタ生産方式の7つムダは、実際に適用する時に不明点があったりする、ということで、 「停滞のムダ、運搬のムダ、動作のムダ」の3つに集約しています。
著者独特のものとしては、分業よりもセル生産方式で一人で全部作業する方が良いことや、大きな声を出すと良い、などもあります。


NPSの極意」 木下幹彌 著 東洋経済新報社 2015
NPSは、「New Production System」の略です。 トヨタ生産方式(TPS)を、異業種にも展開しようとして始まっています。
あらゆる無駄の排除が、基本的な思想としてあります。 そのための基本的な手段が、整流作りになります。 整流を実現するために、平準化、1個流し、かんばん、物や人の流れの分析があります。
NPSでは、製造部門だけでなく、マーケティング、物流、アフターサービス等、すべての分野を視野に入れた整流を考えようとします。
この本は、NPSの30年の歴史を第一ステージとして、そのエッセンスをまとめた本です。 NPSは第二ステージに進むらしいのですが、その内容は不明です。



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