以下は、筆者の私見です。 誤解があれば、ご教示いただけると幸いです。
筆者は、コーヒー牛乳や、ミルクティーを作る時は、カップにミルクを入れておいてから、コーヒーや紅茶を注ぎます。 理由は、その方がおいしいからです。 ミルクが後だと、尖った感じの味になります。
なお、店では、カップに入ったコーヒーと、別の容器に入ったミルクが出ますが、その場合は、ミルクを後に注いでいます。 その状況でミルクを先にするのは、様々な困難があるためです。
統計学関係の文献で、時々、このミルクの話が取り上げられることがあります。
「ミルクは先か後か」というテーマは、 統計的因果推論 として考えるのなら、「ミルクを注ぐ順番で、味が変わるのか」や、 「ミルクを注ぐ順番は、味の違いの原因になるか」というテーマになります。
統計学関係では、統計学の大家として知られるロナウド・フィッシャー氏が、 「順番によって味が変わる」ということを実験計画法を使って検証したことが説明されます。
一般常識から考えると、「混ざってしまえば、味は同じだろう。だから、順番を変えても味は同じだ。」となりがちですが、 ミルクの話は、常識とは異なることでも、統計学を使えば検証できることを教えてくれます。
ミルクの話は、「統計学で検証できる」ということの例として紹介されるのが普通です。
この話は、10回くらい見かけたことがあるのですが、共通点に気付きました。 面白いことに、その記事を書いた著者は誰一人として、自分の舌で確認していないようです。 そもそも、フィッシャー氏も、自分の舌では確認していないようです。
自分の舌で味の違いがわかるのなら、わざわざ実験計画法を持ち出す必要はないのに、「自分の舌で確かめる」ということを避けたために、遠回りをしています。
自分の舌で確かめたことのない人は、フィッシャー氏の実験で、「順番によって味が異なることがわかる」ということが証明されたことを知っていても、「実験のどこかに間違いがある」や、「特殊な味覚の持ち主だけがわかるのだ」といった感じで半信半疑のままのようです。
ミルクの順番の実験は、やろうと思えば、誰でも、わずかな時間と費用でできます。
統計的因果推論 には、いろいろな理論がありますが、そうしたものを使うより、実験してしまった方が、はるかに早く、確実な情報を得ることができます。
筆者は、化学会社に勤めていたことがありますが、化学会社では、レシピがあります。 レシピには、材料の種類と量だけではなく、順番や混ぜ方も書いてあります。
「順番が異なると、違う物ができることがある」というのは、化学の分野では大事な知識です。
また、筆者は料理を作ることが好きですが、料理でもレシピがあります。 「混ざっていればよく、順番は関係ない」というレシピもありますが、順番が大事な料理は珍しくないです。 場合によっては、順番だけでなく、混ぜる速さでも結果が変わります。
化学や料理の経験がある人なら、ミルクの順番の話は、それほど不思議ではないようです。