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問題解決と課題達成

問題と課題は、日常用語としては同じ意味で使われることがありますが、会社の中の用語としては、明確に使い分けられていることもあります。 例えば、 QCストーリー には問題解決型と課題達成型があります。

問題は、現在あるべき姿と実際とのギャップです。 不良品の発生や、機械の故障などが入ります。

一方、 課題は、未来にありたい姿と実際とのギャップです。 新規の業務の実現などになります。

ただし、問題の解決策として、新規の業務を始めたいことがあるので、 同じことに対して、問題と考えたり、課題と考えたりすることがあります。 経験的には、問題と考える方が、進めやすいことが多いです。

問題解決や課題達成の中心にあるのは、起きていることや起こそうとしていることです。 問題解決と課題達成のためのデータサイエンス のページにまとめましたが、 データサイエンス は、それらを進める中での現状把握や要因解析の要所要所で、重要な役割を果たすことがあります。

スピード感

問題解決や課題達成に対して、「3か月から1年くらいのプロジェクト」という形がイメージされていることが、世の中では多いようです。

これは、問題解決や課題達成についての解説を公表している人が、コンサルタントのような立場の人の場合が多いことが原因と思います。 コンサルタントのような立場で、社外の人が参加する場合は、そのような形しかできないというのが実情のようです。

筆者の経験の範囲にはなりますが、会社の中で、「3か月から1年くらい」のスピード感(納期)が適切なテーマは、ごく一部です。

特に問題解決については、「今すぐ」、「今日中」、「来週中」、「今月中」、といったスピード感で、何らかの形で解決させる必要があるテーマが多いです。 補足すると、期間の短いものほど、多いです。 筆者の経験を元に、「このくらいの数値かな・・・」といった感じでまとめてみたものです。 ひとつの工場で現在進行中のテーマの数は、下図になります。
問題解決

プロジェクトの立ち上げを念頭に置いている場合や、 問題解決と課題達成の手順 を使うことを念頭に置いている場合、 データサイエンス を使うことを念頭に置いている場合は、こうしたスピード感にはなかなかなりにくいかもしれません。

一方、解決を急ぐからと言って、どんな解決策でもOKという訳にも行きません。 やはり、根拠は必要になります。

矛盾するようですが、根拠を得るには、 問題解決と課題達成の手順 や、 データサイエンス が必要です。 優先順位を付けることで、網羅性や完全性の精度を下げて、効率良くこれらを進めます。

スピードが求められるテーマであるほど、効率重視にします。

スピード感の身に着け方

最初は手順を確認しながらになりますので、3か月から半年くらいの期間をかけても大丈夫なテーマを、2、3件やってみると良いかと思います。

言葉の話

筆者は、問題解決をミッションとする部門にいたことがあったこともあり、 「問題解決」のことが書いてある文献を、いろいろと見ています。

このページの上記の内容と言葉が同じだったり似ているものとして、「解の発見方法としての、問題解決」と「課題解決」があります。

解の発見方法としての、問題解決

このページの上記の内容は、会社や社会の問題解決です。 原因を特定して、対策していくアプローチになります。

社会人になると、こういう問題が身近になるのですが、学生の場合は、「問題」と言えば、テストの問題のことが身近です。 テストの問題は、上記の言い方をすれば、「課題」の方が当てはまります。 こういう問題(課題)の解決は、解き方(アルゴリズム)を見つけていくアプローチになります。 認知心理学 で「問題解決」という時は、こういった問題です。

ちなみに、会社の問題(課題)の中には、「物流の最適化」など、テストの問題のような問題(課題)もあります。 こういった問題(課題)は、「原因特定→対策」と「解き方を見つける」の両方のアプローチを並行して進めます。

課題解決

このサイトでは、「問題」と「課題」を意識して使い分けていて、問題は「問題解決」、課題は「課題達成」という言い方をしています。 この言い方は、QCストーリーと同じです。

世の中には、「課題解決」という言い方がけっこうあります。 「課題解決」は、「問題解決」と「課題達成」の両方の意味で、世の中では使われています。



参考文献

このページや、このページの子ページの下の方には、参考文献をまとめています。

探してみて気付いたのですが、問題解決の文献の方が、圧倒的に多いです。 課題達成の方は、問題解決の中に混ざっていることが多いようでした。


失敗学と創造学 守りから攻めの品質保証へ」 濱口哲也 著 日科技連 2009
失敗学は、過去の失敗から学んで応用する方法で、創造学は、既存の物から新しい物を発想する方法です。
一見すると、両者は異なるものように見えますが、共通点があります。 それは、まず、過去の事象や、既存の物を書き表すところです。 次に、書き表した内容を一般的な表現で書き表していきます。 上位概念、と呼ばれています。 上位概念がわかると、今までは議論されていなかったことに気付けるようになります。
具体化→抽象化→具体化、とも言えるかもしれません。
この手順にすると、もともとの具体的な話から考えられる範囲では気付けないような、別の分野に応用できるようになります。
このような思考法は、 概念分析 の一種と言えるかもしれません。


上流思考 「問題が起こる前」に解決する新しい問題解決の思考法」 ダン・ヒース 著 ダイヤモンド社 2021
「火ではなく、火元を狙う」と、消火器の訓練で教わりますが、この本は、それと同じ考え方をしていました。
消火器の例では、もっともな考え方と誰もが思うかもしれませんが、世の中の様々な問題の解決の時に、この考え方をしても、 関係者の協力が得られなかったりします。 この本は、そうした難しさをクリアするための、ガイドとしても書かれています。
いろいろな観点が書かれていますが、データを元にして議論する点などもあります。 自分自身はシステム全体を俯瞰してシステム全体の設計を見直す考えを持ちながらも、 システムの混乱の中に身を置きながら、解決に持って行こうとするところは、著者のすごさではないかと思いました。


MBA問題解決100の基本」 グロービス 著 東洋経済新報社 2018
産業界やコンサルティング業界で有名な方が残した言葉や、それに近い言葉を100個紹介しています。
組織の中で、実際に問題解決をしたことがある人には、目新しい内容はないかもしれません。 しかし、多くの人の意識の中にはあっても、言葉として表現されにくいことがまとまっている点が、この本の特長のように思いました。


解の発見方法としての、問題解決

知覚・認知モデル論」  渡辺利夫 著 ナカニシヤ出版 2009
「問題解決のメカニズム」という章があります。
この本でいうところの「問題」というのは、「解がわからないもの」で、「問題解決」というのは、「解を見つけること」を指しています。
たまたま見つける方法、目標と現状のギャップを埋める方法を考えて見つける方法、最適解を探す方法の、3つを挙げています。


問題解決 認知心理学講座 3」 H.カーニー 著 海文堂出版 1989
数学的な問題の解法になるアルゴリズムを見つける方法として、類推やコンピュータで見つける方法を紹介しています。




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