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品質工学の工程管理

品質工学 による生産工程の管理手法は、オンライン品質工学とも呼ばれます。

品質工学の工程管理の特徴は、 経済性の評価を行動の判断基準することと、 制御の理論が中心になっていることだと思います。

経済性の評価は、損失関数が象徴的な存在です。 制御の理論と言うのは、機械の制御の理論(主にフィードバック)を、工程管理の理論に転用しています。 SPC の工程管理の考え方の中にも、フィードバックの考え方はありますが、品質工学の場合は、 自動化されたラインを想定している点が異なるようです。

品質工学の工程管理の行方

このサイトでは、品質工学の体系を大きく3本柱にしています。 このページの「品質工学の工程管理」は、3本柱の内の1本です。 しかし、他の2本( パラメータ設計MTシステム )と異なり、この柱は特に啓蒙されていないようです。 理由は、派手な特徴がないことと、下記の損失関数の実情によると思います。

ところで、3本柱の内、 MTシステム は、生産工程のデータを使うと、工程管理に貢献できます。

損失関数

2次関数で、損失を表現します。 2次関数とは、いわゆるU字曲線です。 これを「損失関数」と言います。 「損失関数」のアイディアは、経済学でも出て来るので、品質工学特有のものではないです。

「なぜ、2次関数なのか」という理由が品質工学の文献に示されていることがありますが、 筆者は、意味のない説明だと考えています。 「高低や増減のバランスを考えるような問題で、最適値を表現する方法として、 もっとも単純な関数の形が2次関数」、という程度の理解の方が、適当のように思います。

損失関数は2次関数なので、 1次関数(一次式) よりは複雑ですが、 数学的には特殊な関数ではありません。

思想としての品質工学の品質

品質工学では、「品質の良し悪しの評価は、 工場内での損得勘定だけでなく 客先でおこる影響も考慮すべき」、と提言しています。 文献によっては、 「製品による社会の損失のコストが品質」としているものもあります。 いずれにしても、製品の社会影響を考慮しています。 「社会影響を評価して、バランスの良い条件で製品を作ろう。」というのが、 品質工学 からの提言です。

そのための数理が、損失関数と言われています。 しかし、 損失関数が評価できるのが、「製品による社会の損失のコスト」の全てなのかどうかは、 確認する方法がありません。

環境問題と品質工学

「製品による社会の損失のコストが品質」という考え方は、 企業起因の 社会的費用 と捉えることができそうです。 社会的費用は、 環境経済学 で検討されています。 社会的費用は、環境問題に関わる費用です。 そのため、「品質工学は環境問題へも配慮している。」と解釈できます。

環境経済学では、社会的費用の計算方法が検討されていますが、決定的なものはありません。 社会的費用を計算しようとすること自体への疑問も投げかけられています。 それを思えば、「製品による社会の損失のコスト」の評価も、同様の事情を抱えているようです。 損失関数で評価できるとは、とても思えません。

品質工学の品質の定義は、理想論に過ぎないのかもしれません。 しかし、少なくとも思想家として、「田口玄一氏は 環境品質 のパイオニアの一人」と言えると思います。



参考文献

ベーシック オンライン品質工学」  田口玄一・横山巽子 著 日本規格協会 2009


製造段階の品質工学」  山本昌吾 編 日本規格協会 1989


環境を重視する 品質コストマネジメント」 伊藤嘉博 著 中央経済社 2001
品質コストや環境コストの計算方法として、損失関数を紹介しています。



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