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静特性と動特性の違い

品質工学 において、静特性と動特性では、歴史的には静特性の方が先に登場しています。 どちらを使うべきかは、実験の目的や内容に依存するので、 「何でもかんでも動特性の実験をすべき」といったことはありません。

使い方の違い

静特性と動特性の違いは、実際の実験の時の使い方で比べるのが一番わかりやすそうです。

上記により、静特性と動特性は実験の目的によって、使い分けることになります。

「様々な因子の組み合わせ」は、分類上は X です。 動特性の実験では、「様々な因子の組み合わせ」に使う X と、 「XとYの2次元的なばらつき」に使う X の2種類があります。 品質工学では、前者が「制御因子」と「誤差因子」に相当し、 後者が「信号因子」に相当します。

SN比の計算式の違い

静特性と動特性の違いは、 静特性のSN比動特性のSN比 にある計算式でもわかります。 SN比の算出に、因子の量の情報が入るか入らないかの違いがあります。 入らない方が静特性です。

具体例で言い直します。 因子の第一水準を「10」と決めたとします。 その場合、動特性ではこの因子の実測値が10.1なのか9.9なのかといったことで、 SN比の大きさが変わります。 しかし、静特性では、因子の実測値はSN比の大きさに無関係です。

動特性のSN比では、「傾き」の算出に因子(X)の値を使うので、Xの影響を受けます。 静特性のSN比では、Yの標準偏差やYの平均だけを使うので、 X が入りません。

静と動

世の中には、「静○○」、「動××」と呼ばれる学問がいろいろあります。 「動××」の方は、英語で「△△ダイナミックス」と呼ばれることもあります。 このサイトのもので言えば、例えば、 分子動力学法システムダイナミクス です。

多くの場合、「動」が付く学問は、系の時間軸の変化を研究しています。 「静」の方は、ある瞬間の状態や、ある期間を「一定」とみなした状態を研究しています。 データサイエンス は、「静」の学問の方が多いです。 現実は「動」です。 「静」の学問は、「静」で成り立つ理論を、 「動」の世界にそのまま適用して失敗することがあります。

話をこのページの主旨に戻します。

品質工学 の静特性と動特性の本質的な違いは、時間軸の考慮の違いではなく、 2次元的にデータを見るかどうかの違いです。 この点は、誤解なく理解する必要があります。 動特性の「動」は、信号因子(X)に合わせて、Y が「動く」ところから来ています。 ただし、2次元の片方の次元を時間軸にすれば、時間軸の変化を調べることもできます。( 動特性の実験の応用 を参照)

尚、品質工学全般に言えることですが、品質工学は基本的に「静」の学問です。

また、ややこしくなりますが、 制御工学 で、「静特性」や「動特性」という言葉が使われる時があります。 この場合、静と動の違いは、時間軸の考慮の違いです。 制御工学では、 時間に依存して変化する特性のことを、「動特性」と言っています。


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