一般的な感覚だと、「現状把握」の中に「要因解析」が入っているのが普通と思いますが、 QCストーリーでは分けて考えます。 そして、分けるのがとても大事な手順になっています。
なお、 課題達成型QCストーリー には、「現状把握」、「要因解析」という名前のステップはありませんが、 課題を達成するための方策が思い当たらない場合や、方策の妥当性をしっかり把握しておきたい場合は、 「現状把握」と「要因解析」が役に立ちます。
上記のことから、このページは「現状把握」、「要因解析」としていますが、これらの言葉が明確に使われている 問題解決型QCストーリー の話だけではないです。
実際の 問題解決型QCストーリー は、もっと細かいですが、ここでのポイントは、以下の3段階の関係です。
何か問題が起きると、「対策はどうする!?」という話になりがちですが、その前に2段階あるのがポイントです。
また、何か問題が起きると、「原因は何だ!?」という話にもなりがちですが、その前に1段階あるのがポイントです。
筆者の経験の範囲になりますが、現状の把握の内容で、その後の進め方の効率や成果が大きく変わります。
「現状の把握」と言ってもいろいろありますので、例を列記します。
冒頭の繰り返しになりますが、 QCストーリーでの「現状の把握」は、一般的な意味での「現状の把握」と違います。 一般的な意味での「現状の把握」は、QCストーリーでの「現状の把握」と「要因の解析」が一緒になっていることが多いようです。
QCストーリーでの現状の把握では、原因系を調べたり、原因と結果の関係を調べる作業が含まれません。 結果系だけを調べます。
現状の把握がしっかりできていると、その時点で対策案がわかってしまうこともあります。 また、その次の要因解析で調べなければいけない要因が、かなり絞り込めるので、要因解析も簡単で効率的になりやすいです。
よくある失敗は、結果系が調べられていない状態で、原因系に手を付け始めることです。 気持ちとしては、早く原因の領域に手を付けたくなりますが、結果系が明確にならないうちに原因系に手を付け始めると、「何もわからない」や、 「結果系の調べ直し」になりがちです。
そうは言っても、実際には、現状の把握の途中で、原因に関係することが出て来ることもあります。 そのため、現状の把握と、その次の要因の解析は、内容の区別がはっきりしないことがありますが、 少なくとも、現状の把握の段階では「原因はこうだ」と決めることを、保留しておいた方が良いです。
現状の把握で、起きていることが明確になったら、要因の解析になります。
要因の解析は、大きく2つに分かれていて、「仮説の設定」と「仮説の検証」があります。
要因の解析の「要因」というのは、原因の可能性のあるものです。 「原因はこうではないか?」と思われるものになります。
「原因はこうではないか?」と最初から目星がついていたとしても、可能性のあるものを、一度は洗い出すのがポイントです。 そうしておくと、目星がついていたものがハズレだった時に、次の進め方が決められます。 この洗い出しの作業が「仮説の設定」になります。
「仮説の検証」では、仮説が本当かどうかの確認になります。 全部を調べてから、次の対策の立案に進んでも良いですが、筆者の経験では、 最初から目星がついていたものや、すぐに調べられるものから順番に調べて、仮説が当たっていたら、できる対策は始めてしまうことが多いです。
問題解決が目的の時は、様々な要因の中から、問題を発生させている原因を突き詰めていきます。 要因同士にも因果関係があったりもします。 最終的には、根本的な原因はひとつに絞り込める場合が多いです。
問題にはならない因果関係というのもあります。
課題達成が目的の時は、根本的な何かを見つけるというよりも、いろいろな因果関係を見つけようとする分析になります。
AFDは、Anticipatory Failure Determinationの略です。 「事前の故障の特定」といった意味になります。
AFDの特徴は、「故障」が起きた理由を、 「なぜ、起きたのか?」、と分析しないことです。 AFDでは、まず、「どうやったら、その故障を起こせるのか?」、と考え始めます。 AFDには、この後のステップも用意されていますが、最初のステップが最大の特徴です。 このように考えると、やることが原因の調査ではなく、発明(仮説の作成)になりますので、 TRIZ や、学術的な知識が役に立つようになります。
原因に対して、「なぜ?なぜ?」と進めるアプローチは、ボトムアップ(下位から上位に進む)と言えます。 「なぜ?なぜ?」は、理由が思い付かなくて、行き詰まることがあります。 一方、AFDは、トップダウン(上位から下位に進む)のアプローチです。
AFDを、すでに起こった故障の分析に使う場合は、仮説のリストから、実際に起こった時の条件に当てはまるものを探します。 これから起こりそうな故障の予測に使う場合は、リスクの評価や発生の予防処置を進めます。
「QCサークル活動の基本と進め方 あらゆる小集団活動に役立つ」 山田佳明 編著 日科技連出版社 2011
現状把握として、ねらいと実績のギャップの大きさやタイミングを見る分析を挙げています。
データを分けたり、折れ線グラフで見ることで何が起きているのかを見ます。
「最新品質管理の基本と仕組みがよ〜くわかる本 製造/技術/事務全てで使える実践ハンドブック」 内田治 他 著 秀和システム 2012
現状把握に測定値の評価として、ゲージR&Rが紹介されています。
シックスシグマ
ではMeasureの段階でゲージR&Rが入るのは知っていましたが、QCストーリーの説明の中で出て来るのは、筆者はこの本以外に知らないです。
「「論理的思考だけでは出せない答え」を導くあたらしい問題解決」 長田英知 著 日本実業出版社 2021
Sense、Segment、Storyの3つを重要視しています。
Sense:基準は何かを考え、基準からの距離を考える
Segment:物事を分けて考える
Story:人に共感してもらうためには流れが大事。特に象徴的なワンフレーズを示すことが大事。
「問題を整理し、分析する技術」 日本能率協会コンサルティング 著 日本能率協会マネジメントセンター 2012
問題の分析の基本的なポイントを丁寧に説明しています。
業務分析や事業分析など、さまざまなケースについての基本的な扱い方もあります。
「仕事に役立つインテリジェンス 問題解決のための情報分析入門」 北岡元 著 PHP研究所 2008
誤った結論になっていまう人間の物の考え方のクセを示しています。
適度な仮説の見直しや、仮説を競合させる分析を提案しています。
「公務員のための問題解決フレームワーク」 秋田将人 著 学陽書房 2021
フレームワークの本は、
問題解決の手順
の中の現状分析と要因分析の本になっているものが多いですが、この本は、対策立案や効果的な説明の仕方の方法論も入っています。
おそらく著者ご自身は、解決させることに責任がある中で、多くの問題に向き合って来られたのではないかと思います。
このサイトでは、「問題の原因」という言い方をして、「問題」と「原因」は分けるようにしていますが、
この本では、「原因」も「問題」になっています。
そのため、
問題解決の手順
のようにして、問題の原因を解明してから、対策案を考えるのではなく、
問題に対して直接的に対策案を考える進め方になっています。
そのため、「問題は何か」ということの考え方の説明も多いです。
「ラテラルシンキング」として、論理的に考えると出て来ないようなアイディアを出す方法を紹介しています。
「問題の設定を変える」、「別人になって考える」、「なくす・減らす」、「マイナスをプラスに変える」、「他のもの・人を活用する」、
「組み合わせてみる」、「問題そのものをなくす」です。
「すぐに役立つ!問題解決手法の基本と活用法」 神谷俊彦 編著 アニモ出版 2020
問題解決のための、現状分析、発想法、意思決定法のフレームワークを紹介しています。
本全体の内容とは違いますが、問題解決のために占いを使う経営者は少なくないそうで、占いも方法のひとつとして知っておくと良いそうです。
「わかる!できる! 図解 問題解決の技法」 橋誠 著 日科技連出版社 2019
アイディアをどんどん出したり、まとめたりするための様々な手法をわかりやすく紹介しています。
「問題解決フレームワーク大全」 堀公俊 著 日本経済新聞出版社 2015
この本の「問題」の意味は、「会社で物事を前に進めたい時の困った事」、といった意味合いになっています。
このサイトでいうところの問題解決は、この本では「ギャップアプローチ」と言われるものになっていました。
ギャップアプローチは、「問題の特定」、「問題の分析(原因の特定)」、「解決策の立案」、「解決策の決定」の4段階になっています。
ギャップ、創造的、合理的決定、ポジティブ、対立解消、認知転換、ホールシステムの7つのアプローチに、様々な方法を分類しています。
ギャップ : ロジックツリー(系統図)、親和図、因果関係分析(相関分析)、ベンチマーキング
創造的 : 自由連想(ブレーンストーミング、マインドマップ)、結合発想、類似発想(NM法)、ブレークスルー思考(理想から考える)、
デザイン思考(共感から始める)
合理的決定 : プロコン(相反する意見を考える)、デシジョンツリー
ポジティブ : GROWモデル(目標に向かって進む)、アドラー心理学(行動の原因を、感情ではなく目的で考える)
対立解消 : 制約理論(思考の前提条件に焦点を当てる)
認知転換 : 質問会議(質問で問題点をあぶり出す)、ジョハリの窓(二人の知っているもの、知らないものを分類する)、
ABC理論(非合理的な信念(mustやshould)から合理的信念(may、can、will)へ)
ホールシステム : ワールドカフェ(メンバーを変えながら少人数で話す)
「フレームワーク使いこなしブック 問題発見力・分析力・解決力がしっかり身につく」 吉澤準特 著 日本能率協会マネジメントセンター 2010
38種類のフレームワークと、EM法という問題解決のプロセスのフレームワークを紹介しています。
EM法は、段階がとても多いです。
「戦略フレームワークの思考法 並列化・時系列化・二次元化で使いこなせる」 手塚貞治 著 日本実業出版社 2008
タイトルにもありますが、戦略フレームワークは、「並列化・時系列化・二次元化」の3種類に大きく分かれていることを知っていると良いようです。
「図解基本ビジネス思考法45」 グロービス 著 ダイヤモンド社 2017
45種類の「○○思考」が7つに分類されて、体系的にまとめられています。
筆者なりに分類すると、、統計的、ニーズ、シーズ、といったキーワードに注意する思考法や、
全体を見たり、違う立ち位置から見たりなどの、物事の見方が重要な思考法が多いように思いました。
「故障・不具合対策の決め手 I-TRIZによる原因分析・リスク管理」 スヴェトラーナ・ヴィスネポルスキー 著 黒澤愼輔 訳 日刊工業新聞社 2013
AFDの提唱者の本です。
AFDをI-TRIZと呼んでいます。
AFDは、TRIZを専門とするコンサルタントが、実際の故障の問題に取り組む中で、編み出したものです。
AFDを大きく3つのステップにしています。(このステップで問題解決を進めるのは、難しくないそうです。)
ステップ1 問題の逆転 : 問題を起こす方法を考える。
故障問題の解決は、ネガティブな気分になりがちな取り組みですが、逆転によって、ポジティブな気分で進められるそうです。
発想が先細りしにくくなります。
ステップ2 不具合の仮説を作る : このステップでTRIZを使ったり、インターネットで情報収集したりします。
ステップ3 資源を特定する : 仮説のリストから、発生の条件がそろっているものを探すことによって、仮説を絞り込む。
(真の原因である可能性がもっとも高い。)
順路
次は
対策の立案