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ヘップ(HEP)

ヘップとは、 生態系 の環境影響評価で、英語では「Habitat Evaluation Procedures(生息域評価手続き・HEP)」です。 標準的・定量的・非金銭的を目指し、米国で考案された方法です。
その土地の野生生物の生息環境としての価値を、0から1の値で評価します。 生息環境の価値は、量・質・時間的な観点から定量化します。

ヘップの面白いところは、現在公開している方法を、究極の評価方法のように考えていないことです。 今、考えられるすべての知見を込めて方法を考え、とりあえず公開し、 使いながら改善する体制にしています。

ミティゲーション

ミティゲーション(mitigation)として、 環境に関わる時の優先順位が示されています。 「回避 → 最小化 → 修正 → 軽減 → 代償」の順に考えるべきとしています。

「代償」は、最後の手段として位置付けられています。 「代償」は、「代償をしているから良い。」という風にして、安易な結論に利用されることのある考え方です。

代償

代償では、ある場所の湿地帯をやむなく消失させた場合に、 別の場所に同じような湿地帯を作ってしまうことを想定しています。

(代償は、事例が既にあるようなのですが、長い目で見た時の妥当性が、筆者にはわかりません。 また、「数種の動植物の生息を確認し、それらが絶滅しないようにすれば良い。」という判断基準の妥当性も、 筆者にはわかりません。 大抵は、希少な種・好まれる種・良く知られている種、 というようなものにだけ注目しているように見受けるのですが、 特に、この点は、落とし穴があるように思っています。)

ノーネットロス

「ネット(net)」が合計で、「ロス(loss)」が損失です。 それが「ノー(no)」なので、「合計の損失をなくそう!」という考え方です。 ミティゲーションの「代償」の部分に相当します。

ノーネットロスは、生態系の定量化が適切で、かつ、 「代償」のための対策が自然の理に適合していなければ、できません。

ネットゲイン

ノーネットロスの発展形として、ネットゲイン(net-gain)という考え方があります。 ノーネットロスは、「プラスマイナスをゼロにしよう」という考え方ですが、 ネットゲインとは、「新たに作る生態系を、壊してしまう生態系よりも、素晴らしいものにする。」 という考え方です。

ネットゲインは、ノーネットロスが本当にできるのならば、できるのかもしれません。



参考文献

HEP入門―<ハビタット評価手続き>マニュアル」 田中章 著 朝倉書店 2006
筆者の知る限りでは、唯一のヘップの入門書です。 基本的な考え方から事例まで、丁寧に解説されています。


環境アセスメントはヘップ(HEP)でいきる」 日本生態系協会 監修 ぎょうせい 2004
米国と日本の環境アセスメントの歩みに触れつつ、 ヘップを解説している本です。


エコロジストの時間」 日本環境アセスメント協会 編 東海大学出版会 2008
様々な著者による、環境アセスメントのエッセイ集です。


環境アセスメント読本」 柳憲一郎・浦郷昭子 著 ぎょうせい 2002
環境アセスメントへの誤解を通して、目指すべきあり方を解説しています。 米国の場合も比較に出てきます。



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