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環境影響の尺度

事業所等の環境管理に使われる 尺度 には、大きく分けて、総量と比率の2つの種類があります。 それぞれに一長一短があります。

総量をベースにした尺度 (質量・排出量)

総量をベースにした尺度とは、排水中の有害物質の質量や、CO2(二酸化炭素)の排出量です。

PRTR法 は、有害物質の総量を管理するための法律です。

比率をベースにした尺度 (濃度・原単位・効率)

比率をベースにした尺度とは、有害物質で言えば、"濃度"です。 公害防止の法律は、濃度の管理を定めています。 CO2の場合は、濃度ではなく、 CO2の総量を工場の規模を表す量(例えば、売上高)で割った値を管理します。 このような尺度は、"原単位"と呼ばれます。

"環境効率"や"ファクター" と言われる尺度も、比率の尺度に分類されます。

ちなみに、比率の尺度を使う時には、 分子と分母の 相関性 が暗黙の前提になっています。 相関性があると、「改善後」を、 層別 することによって、改善の効果がわかります。 相関性がないと、「改善」の影響が見えなくなります。 濃度の場合、この前提が特に影響しませんが、 意図的な要素が大きな尺度(例:CO2関係)では、注意が必要です。

環境効率

環境効率とは、Eco-Efficiencyの訳です。 環境効率は定義がいろいろあり、例えば、「アウトプット/インプット」や、「産出/投入」です。 環境効率の目標値を4にすべきだとするのが、ファクター4で、 10にすべきとするのが、ファクター10と呼ばれています。

WBCSD( World Business Council for Sustainable Development )による環境効率の基準は、
@ 物質集約度の削減
A エネルギー集約度の削減
B 有害化学物質の拡散の減少
C リサイクル性の向上
D 再生可能資源の活用
E 耐久性の向上
F 利用密度の向上
になっています。 環境適合設計 で言われている項目と似ています。

環境効率としては、「30/20」と「3/2」は、「1.5」で同じ値です。 この例では、分母が10倍増えて環境への影響が大きくなっても、 分子も一緒に増えていれば、環境効率としては同じになっています。 そのため、 環境影響の尺度 は、環境効率だけでは足りません。

環境効率には、「価値/環境影響」という定義もあります。 この場合、分母と分子の単位が異なるので、 環境効率が無次元量にはなりません。

ファクター

ファクターは、「評価対象の環境効率/基準の環境効率」で定義されます。 環境効率よりも複雑な構造の尺度です。 ファクターは無次元量です。



参考文献

エコ・エフィエンシーへの挑戦」 リビト デシモン・フランク ポポフ + WBCSD 著 山本良一 監訳 日科技連 1998
環境効率がタイトルに入っている本です。 指標としての環境効率の話はもちろんあるのですが、 「環境効率」という言葉を、 企業の環境対応と成長をつなげる象徴として使っているような部分もあるように思いました。 環境効率自身の有効性よりも、 企業の環境対応の有効性を、様々な角度から論じている本と言えるかもしれません。
環境対応が競争力アップにつながるという主張があります。 その理由は、省エネや省資源という環境対応が、長期的なコスト削減につながるということと、 環境対応はイメージアップにつながるということの2点のようです。 環境対応は単純にコストの増加にならないと提言しています。



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